「兄と妹」への投稿

「わかった」
俺は頷いて妹の手をとった。「えっ」とその瞬間は妹も驚いていたが、俺の顔をちらっと見ると、赤くした顔を俯かせて少しだけ強く握り返した。

すると、目の前で靴音を鳴らしながら女の人がこっちに向かってくる。
女の人は何か動物の毛皮のマフラーを首に巻いて、妹と同じ黒いコートを羽織っていた。
薄めに見える生地のそれは、けれど見ただけで高価なものだとわかった。

俺は女の人と距離を離すように道の内側に寄った。
妹の手を強く握り、「目を合わせるなよ」と小声でぼそっと言う。

通り過ぎる瞬間、視線がこっちに向いた気がした。
俺は目を合わさないように雪の積もった地面を見つめた。
思わず女の人の履いている靴が目に入る。
それを見た瞬間、俺は妹の手を引いて走り出した。「どうしたのお兄ちゃん」と叫ぶ妹を無視して、道を塞ぐように小さく積もった雪を蹴飛ばして俺は小さく呟いた。

「はやく帰ろう」

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あきカン