小説家 完結作品
1位
五月に死ぬ魔女
五月に死ぬ魔女
# その他
綾里けいし
44.5万
80
8
―――魔女は五月に死ぬ。
―――だが、五月以外には決して死なない
そう、『何があろうとも』
三日月街には魔女がいる。
それは都市伝説の一つだ。
彼女達は五月に産まれてくる。そして五月に死ぬのだ。逆を言うのならば五月以外には決して死なない。交通事故に遭おうとも飛び降りようとも首を吊ろうとも病にかかろうとも、その命は続く。だが、五月にはただの人間と同じように死んでしまう。
それ以外、人と魔女に大きな差はない。
そう、語られている。
だが、光川圭の知る魔女はただの人間とは異なった。
彼女はとびきりの美人で不吉な人物だ。血を好み、悲劇を嗤う。不思議な力を持つのだとも自称している。それが本当か嘘かはわからない。 真偽を知ろうとも圭は思わなかった。そもそも永久子が本当に魔女なのかどうかも確かではない。確かに永久子は常人とは違って見えるものの圭はそう疑っていた。
――今までは
2位
お嫁さんにしたいコンテスト1位の後輩と遭難した
お嫁さんにしたいコンテスト1位の後輩と遭難した
# ファンタジー
岩波零
10.2万
65
0
「先輩、起きてください先輩」
朝日さんの優しい呼びかけによって、俺の意識は覚醒した。
目を開けると、すぐ近くに朝日さんの美しい顔があった。彼女は高校の文化祭で行われた『お嫁さんにしたいコンテスト』で1位だった超絶美少女なので、思わず照れる。
朝日さんは心配そうに俺の顔を覗き込んでおり、その背後には雲一つない青空が広がっている。
「――えっ? なんで外?」
驚いて体を起こしてみると、なぜか俺は砂浜に倒れていた。
3位
異世界に転生した俺は勇者か魔王か選べるらしい
異世界に転生した俺は勇者か魔王か選べるらしい
# 異世界
三門鉄狼
3.8万
36
0
トラックに跳ね飛ばされた俺は気づくと真っ白な空間にいた。
目の前に女の人が現れる。
「私は女神。あなたに選択肢を伝えます」
選択肢?
「あなたは人々が魔法を使いたい生きている異世界に転生します。そしてあなたは転生する身分を選べます」
へえ、ありがたいな。
魔法使い? 剣士? 鍛冶職人?
迷っていると女神は言った。
「あなたは勇者と魔王どちらに転生したいですか?」
へ?
4位
窓際一番後ろの席
窓際一番後ろの席
# ホラー
堀 真潮
6610
16
2
窓際の一番後ろの席、そこにカヤノさんが座っている。
先月、突然亡くなったカヤノさんだ。
元々持病があったのだと、その時初めて知った。
カヤノさんは、生前の姿そのままで花の飾られた机に静かに座っている。
本当は生きているんじゃないかと思う事もあるけれど、彼女の横顔を透かして揺れるカーテンが見えたりすると「ああ、やっぱり死んでるんだな」と思う。
退屈な午後の授業、眠りを誘う先生の声を聴きながら、廊下側二列目一番後ろの席から、僕はカヤノさんを眺める。
カヤノさんが現れるのは授業中だけ。見えているのは僕だけらしい。
らしいというのは、見えていない振りをしている人がいるかも知れないからだ。
僕と同じように。
そして、カヤノさんは、ある人をじっと見ている。
窓際から二列目、前から二番目の席。
口元に微かな笑みを浮かべて、そこに座る人の背中をずっと見つめている。
5位
夜中の客
夜中の客
# ショート×2
堀 真潮
9115
13
1
月のない夜の事である
炭焼きを生業とする男の小屋の戸を叩くものがあった。
山の中の一軒家である。もしや道に迷った猟師か木こりだろうかと、男は戸を開けた。
そこに立っていたのは十ばかりの娘と、弟と思われる幼子だった。
「一晩泊めていただけませんか」
娘は静かな声で言った。
こんな真夜中に子供二人が山の中にいるなんて、さては妖の類かとも思ったが、疲れ果てた姿がどうにも憐れで、男は二人を小屋に入れると、明日の分に取っておいた飯を雑炊にして食わせた。
子供はすっかり汚れていたけれど、着物は上等な物で、顔つきもどこか品が良い。
雑炊を食べ終わると、二人はきちんと座り直して男に告げた。
6位
船の娘
船の娘
# ショート×2
堀 真潮
7503
8
3
私は船で生まれた。
両親は、小さな宇宙船で他の星を回って、地球で仕入れた細々とした物を売る星間行商人で、宇宙船が私の家だった。
幼い頃の私は、この生活が嫌ではなかった。
いろいろな星を巡って珍しい物を見るのが楽しかったし、どの星の子供ともすぐに仲良くなれた。
宇宙中に友達がいた。
おかしいと気付いたのは、久しぶりに地球の友達に会った時だ。
以前は二人とも同じくらいの背格好で、好きな物も同じで、一緒に駆け回る事ができた。
いまや彼女は女性で、私だけが少女のまま。
踵の高い靴を履いた彼女は、もう理由なく走ったりしない。
「どうして?」
私は両親に聞いた。
星間航行は光速に近い速度で移動する。そのため、地上よりも時間の進みが遅いのだと彼らは言った。
突き付けられた残酷な現実に私は泣いた。
「皆と一緒に大人にはなれないの?」
私が聞くと、両親は静かに微笑んだ。