「モンスター・オブ・ザ・デストロイ」への投稿

不穏な何か

時間をさかのぼる所、数日前私は寝静まる深夜の未明、一人ランニングをしていた。

夜の閑静な住宅街の道路は日中、学生や主婦の往来やご近所さんの井戸端会議所として、そこそこ賑わっている。
だが今往来するのは私一人以外の足音が全くしない。大きな交差点で信号待ちをしていても時折トラックやゴミ収集車が通るぐらいだ。この限りなく静かな空間の中で、暗闇の中で運動するほかなかった。ランニングシューズの足音が暗闇から住宅を伝って反響する。
『当たり前でつまらない日常』走っている最中、何度も考えた。薄きみ悪い外気に晒され次の交差点の光にたどり着くまで答えを考える。
毎日学校に行き、勉強運動人間関係をほど良くこなし、帰りはバイトでお金を稼ぐこと。つまらない日常。それが私の普通で、良かった。

爽快に走っていた二足は交差点の光が見えるまえに徐々に速度を落とし、止まってしまう。
指先から体の中心に向かってずっしりとだるく重くなってくる。特に後頭部から滝に打たれているようなずっしりした圧力を感じる。
辛うじて目は動かせた。うつむいた姿勢で当りを見渡す。
目の前の電灯が点滅している。
ぱち、ぱちっ。と内部の安定器が故障している音が響く。
物音せずに私の後ろに何かいる気がする。自分よりもはるかに大きく混沌としたもののような気がする。

だが体を動かすことも後ろを振り向くこともできない。声もでなければ、神へ祈る余裕もない。
運動の汗とは別に健康に悪い汗が全身から一滴、また一滴と噴き出る。
危険を察知した私でも何も抵抗することができない。指一本でも動かせないと諦めるしかなかった。

何かが背後にいた数分間が過ぎると、それはいなくなった。